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Mutsumi Sue Work
© Mutsumi Sue / fabre8710

デコレート

末むつみ Mutsumi Sue

2007年4月14日(土)~ 5月26日(土)
12:00~19:00 日・月・祝休
*5月1日(火)・2日(水)は休廊いたします。

オープニングレセプション : 4月14日(土)18 : 00~20 : 00
*初日、作家を囲んでのレセプションパーティーを開催いたします。
4月中旬から末むつみが渡仏するためその壮行会もかねております。
皆様のご来廊をお待ちいたしております。お気軽にご参加ください。

今回、二度目となるファーブル芸術事務所での個展「デコレート」では、末むつみが自らのイメージを膨らませ描いた作品や、「シミ」など偶然そこにあった形を利用して描いたものなど、さまざまな着想、手法によって制作された作品で構成されます。くるくるとうねったループは、何かにぶつかり、混ざり、連なり、どこかのある地点へ向けてひたむきに突き進んでいきます。

Mutsumi Sue Work
© Mutsumi Sue / fabre8710


 

末むつみは、近年、トレーシングペーパーや油紙などにボールペンを使って細かいループ状の線を描く手法で独自の世界観を打ち出し、自らの絵画表現を追究して(ときには逸脱をはかって)きた。ファーブル芸術事務所での前回の個展「サムシング ライク ミー」では、トレーシングペーパーや油紙に赤色のボールペンを使って描いていたが、今回の個展「デコレート」では、主に韓国製のオンドル紙に青色のボールペンで、くるくる、くねくねと、ペン先を走らせるように表情豊かな細かいループを描いている。オンドル紙と青インクが醸し出す色合いや風合いは、これまでの作品とは異なる側面 を我々に提示し、これら青インクの作品群とこれまでのように赤インクで描かれた作品との対比が、今展の展示をひときわ引き立たせることになるだろう。さらに今展「デコレート」で末むつみは、自らのイメージを膨らませて描いた作品に加えて、支持体となる紙の上に元々あった複数の「シミ」を引き金にして描いた作品を制作している。紙上に偶然散らばる「シミ」からペン先を走らせることで、複数の出発点(「シミ」)を融合させた複雑な法則性を持った独自の世界観を構築することに成功している。このように制作方法においても、そこにさまざまなルールを設定することで、ある時はストイックにある時は開放的に表現を探究および謳歌している。また、しばしばモチーフとして作品中に登場するクリームや渦巻き状の「何ものか」(近年はクリームの形状をとることが多いが、その前は寿司であったり、それは一定ではない。新作においてはクリームだけではなく渦巻きのような形状として現れている)が、意図的にせよ偶然にせよ画面 のあちらこちらに点在し、なかには意図的にサークル状に配置されたものもあり、それらはシャーマンか何者かが石を積んでいるかのようにも見え、また、何かの「まじない」のようにも受け取れる。作品全体に、くるくる、くねくねと広がる細かなループ状の波形が描きだす世界は、例えるならば、まるで宇宙のようであり、空のようでもあり、海のようでもある。そう考えると、作品中に点在するクリームや渦巻き状の「何ものか」は、星であったり、雲であったり、島であったりするのだろうか。具体的に何であるかは、本当の所は知る由もないし、具体的なものである必要もないのかもしれないが、作家が作品を通 じて提示する世界観と観るものが作品を通して想像する世界観がふれ合える場所、重なり合える波長が、そこに存在するのではないだろうか。緊張感と開放感が共存する末むつみの作品は、平面 を飛び越えて、さまざまなレイヤーの「別次元」へと観るものを誘うかのようだ。私には、「枯山水」を連想させた。

ディレクター 南口俊樹


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