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「あたたかい予感」榊原由依 Yui Sakakibara

2006年9月23日(土・祝)~ 11月18日(土)
会期中の木・金・土のみ[Open]→ 12:00 ~ 19:00
*月~水および日曜は[Close]ですが、アポイントメントで[Open]いたします。

オープニングレセプション:9月23日(土・祝)18:00 ~ 20:00
*初日、作家を囲んでのレセプションパーティーを開催いたします。
皆様のご来廊をお待ちいたしております。お気軽にご参加ください。

小さい頃に遊んだものや、たまたま身の回りに転がっていたもの(お菓子の空き箱など)、使いやすい素材(段ボールなど)を用いて、子供たちがよくする人形遊びのような感覚で独自の"世界観"をつくり上げていく榊原由依の、fabre8710での、大阪での、初個展です。立体、映像、ドローイング、ペインティングによって構成されます。

 

榊原由依(さかきばらゆい)の、4本の足。

榊原由依の作品群を俯瞰で眺めてみると、4本足の作品が多いことに気づく。

それは、犬的、ねこ的であったり、うさぎ的であったり、こたつ的であったり、車的、はたまた四つん這いの人間であったりする。はいはいの目線になると、大人には見えないものが見えてくる、と言われるが、榊原由依の作品は、ふだん、わたしたちが意識できないでいる世界をスムーズに提示してくれる。"スムーズに"というのは、わたしたちをその世界に引きずり込むのではなく、その世界がわたしたちの中へとすんなり浸透してくるかのように感じられるからだ。

榊原由依の作品群を俯瞰で眺めてみると、小さな世界を旅するように思える。

「これは、子供のための現代アート?」と、新しいアートの小さな鉱脈を発見したような気分にさせてくれる。それは、レディーメイドを"雰囲気でもって価値転換する"、新しいゲームのあり方を提示しているふうだ。お菓子のおまけ的ワクワク感ともいえる作品群は、大人もぞんぶんに楽しめるだけのキャパシティを持っている。小さな世界が大きく広がる。まるでキャラメル箱の中に無限の宇宙が広がり、そのファンタジーの力で価値観をひっくりかえすかのように。

榊原由依の作品群を俯瞰で眺めてみると、魔法瓶の中のような世界でもある。

作品「こたついぬ」の、こたつの赤外線がスカートの下から外にもれているさまは母親の胎内を連想させ、また、その赤外線の光は子孫繁栄を促すためのエロティシズムを感じさせる。加えて、榊原由依のインスタレーションの中には、制作過程によって生まれた作家の見えない足跡があちらこちらに点在しているかのようだ。作品および作品が醸し出す世界に対する作家のまなざしが、そう感じさせるのだろうか。そこに、つつまれる存在とつつむ存在が共存している。

榊原由依の作品群を俯瞰で眺めてみると、日本で培われてきた知恵が見える。

干し柿、ミカン、コタツ、ねこ。作品には、ある意味ドメスティックで土着性の強いアイテムがしばしば使用される。さらに、日本で昔から培われてきたおばあちゃんの知恵のように機能的なものも多い。はっとさせるのではなく、なるほど、とすんなり思考の中に溶け込むウィットが効いている。これは、言葉になる前のあいまいな感じを表現しようとする作家の思いが根底にあるからではないだろうか。気がつけば流されている、潮の流れみたいなものかもしれない。

ディレクター 南口俊樹


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